写真のことば

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アルバムを修復するというしごと

文:藤本智士

「のこしていくこと」について考え実践しつづける企業が大阪にあります。その名もナカバヤシ株式会社。
そうです、あのフエルアルバムでお馴染みの会社です。
そのナカバヤシと、俳優の佐野史郎さんが出会ったことから、いま、一つのプロジェクトが動き出そうとしています。


ナカバヤシの原点

ナカバヤシと聞いたとき、多くの人が思い浮かべるフエルアルバム。別売りの台紙を加えれば、まさにページが増えるアルバムは昭和43年の発売当時、画期的な商品として一世を風靡しました。しかし実はナカバヤシの創業はそこから45年も前の大正12年。雑誌の合本や書籍の修復でその商売をスタートしたのです。ゆえに今現在だってこちらも立派な本業。ちなみにお馴染みのフエルアルバムも、お客さんからアルバム修復を請け負ったとき、最後のページに台紙に貼りきれなかった数枚の写真が挟まれているのを見つけ、「一冊で完結できるアルバムを作ってあげたい」と思ったことから着想、生まれたものだそう。まさにアルバム修復はナカバヤシの原点の一つと言えるかもしれません。

佐野家のアルバム

俳優の佐野史郎さんは、以前本誌にも登場くださったほどに写真好きとして有名な方。また、島根県松江市のご実家には、100年前に撮られたという佐野家初代の集合写真までもがアルバムに保存されており、そのプリントのあまりの美しさに、「佐野家六代をめぐるフォトアルバム」と題された展覧会が開催されました。実は、そのときに飾った佐野家のアルバムたちのなかで、特に観覧者の反応が大きかったものが2冊あったとのこと。それは、佐野さんが生まれる前、まさに佐野さんのご両親の新婚当初を綴ったアルバムと、佐野さんが生まれてからの成長記録が綴られた、その名も「愛児の生立」というアルバムでした。

佐野史郎とナカバヤシの出会い

しかし、その2冊のアルバムは随分と傷みが激しく、頁をめくるのも大変なほどでした。佐野さんはテレビ番組等で幼少期の写真の提出を求められることも多く、古いアルバムを手にする事が頻繁だったことも、その一因だったようでした。けれどやはり気軽に見ることが出来てこそのアルバムです。なんとかこの2冊を手にとって見れるように修復してもらえるようなところはないだろうか?そう考えていた佐野さんが、偶然にもナカバヤシと出会ったのは「Re:S(りす)」という雑誌の取材でのことでした。兵庫養父市にあるナカバヤシの関宮工場に訪れた佐野さんは、そこで修復の現場を目の当たりにします。職人の丁寧な技に感動した佐野さんは、例の2冊のアルバムの修復をナカバヤシにお願いしようと決意。その申し出にナカバヤシが応えてくれたことで、現在、その修復がスタートしています。

修復方針

2冊のアルバムは現在まだ修復中ということで、そのビフォア&アフターは、またどこかで発表するとして、いったいどのような箇所がどのように修復されるのか、その修復方針の一部を少しだけ公開します。これら修復方針を見るだけでも、ナカバヤシという企業の強い思いが見て取れるかと思います。世の中にこのようなしごとがあるんだということ、そしてアルバムをのこしていくということは、まさに文化をのこしていくということなのだという事実に、綺麗に修復を終えた佐野家のアルバムは気付かせてくれるのだろうと思います。



佐野家のアルバム修復方針

おもて表紙
«状態»おもて表紙は天・地・小口部分に破損があるためか、全てガムテープで覆われている。背表紙は欠損。
«修復提案»ガムテープを剥がし、極力色落ち等、原本へのダメージを最小限に抑えて粘着を除去する。破損状況により似た色の生地を使用して表紙を再作成し、元のオモテウラ表紙を貼り、現状のイメージを維持する。

綴じ
«状態»ノド部分の破損が多く見られる。またガムテープにて簡易補修した箇所も多数あり。2 枚目と3 枚目の間から順序不明の台紙2枚あり。

«修復提案»ノド部分の破損は和紙を使用して補修。ガムテープも剥がし、粘着を除去。


佐野史郎(さのしろう)

1955年生まれ。
数多くの映画・TV ・舞台に出演。写真にも造詣が深く、2008年、初の写真展「あなたがいるから、ぼくがいる」を富士フイルムスクエアにて開催。
この他、執筆、音楽など多方面で活躍。


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