写真のことば

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浅田家のアルバム

父:章/母:順子/兄:幸宏 /兄嫁:和子/弟:政志

文:品川美歩
写真:浅田政志

写真集『浅田家』で第34回木村伊兵衛賞を受賞した浅田政志。ユニークなシチュエーションやパフォーマンスで、自分の家族と浅田政志自らがセルフタイマーで写るその作品は、見る人誰しもが思わず微笑んでしまうような家族の姿が表現されています。ここは、三重県阿漕浦海岸のほど近くに位置する静かな住宅街。浅田家の居間では、家族5人に囲まれたアルバムが開かれようとしています。


父  何年前? タイムスリップやな! わたし見るの30年ぶりくらいやわ。う〜ん、楽しいね。見てたらずっと昔に帰っていきますな。お母さん若いな〜! ははははは! 30年前や!

  みんな30年前や! 一人だけ35年前やったらおかしいやろ(笑)。

  写真ってのはええなあ〜!

  家族アルバム自体、うち、みんなであんまりめくらないよな。ちゃんと家族でアルバムめくったことないんちゃう?

  お母さんは何べんも整理したり出したりしてるから見てますよ。

  俺は最近かっちゃん(兄嫁)と一緒に見たよな。もうすぐ男の子産まれるからさ。

  宏君の小さい子が産まれるってどんなんやろう? どんな顔なんか見てやろうってね(笑)。

  ふふふ。足型! こんなに小さい!

  ちゃんと真面目にメッセージ書き込んでる。

  すごい! こんなに細かくちゃんと書いてくれとるよ。

  字が上手かったか、下手やったかも分かるな。今みたいにパソコンで書いてたら分からんしな。

  なんでメッセージ欄の貼らんでいいとこに、オトンだけ写真貼ってるん?

  お父さん自分で貼りたかったんでしょ、この若さの時に(笑)。

  パラパラめくったら、写真やから、またこう……1ページ、1ページが遅く遅く感じますな。思い出がみんなひとつずつ。「ああ、あの時はあんなんだった」「この時はこんなんだった」ってね。それが写真のパワーっていいますかね。写真の魅力といいますか。

  記憶を共有してるからさ。

  出た!「写真のパワー」って親父の売り文句やから(笑)。

  オトンは貼ってないの?

  オカン。貼るのは100%オカン。

  うん。撮るのはお父さんで、お母さんは整理。

  オカン撮らんか? 撮らんこともないやろ?

  お父さんと一緒によく写っとるやん。

  これとかそうやな。オトンが写ってる写真は撮ってるってことやもんな。

  うん。撮らんことはないよ。年賀状も撮って出しましたし。

  年賀状の写真は、政志が産まれてから14年間くらいずっと撮り続けてきて。必ず兄ちゃんと政志を入れてね。それは今の政志に影響あるかもしれんな。でも大きくなってからは「お父さん、もうはずかしいから撮らんでええわ」って言われて。

  そういうのってマーシー(政志)のルーツと関係あるんかな?

  これは関係あるんちゃうかな。

  お父さんがずっと写真を撮っとる中に、あんたらが必ず入るわけやし。そういう形では、写真っていうものにずっと会ってるんちゃう?どっか旅行に行ったり、休みで外出する度に必ず写真撮っとったしさ。あんた達が意識してなくても、関わりはあったと思うよ。

  年賀状の写真を撮る場所はみんな三重県内でね。写真と一緒に場所の名前も書いたりして、「三重県ってのはいいなあ.、こんなとこあるの?」って思ってもらえるようPRして。年賀状だから県内県外、日本全国に行き渡るでしょ。「ただ撮りました、ハイ」っていうんじゃなくて、ちょっとストーリー性があるところは『浅田家』とニュアンスが似てると思うね。

  ちょっと、このページ見て(笑)。同じもの並べてアンディ・ウォーホルのシルクスクリーンみたいになっとる(笑)。

  そういうのがあるん?

  なかなかこうは並べやんよな(笑)。

  オカン、そういうのナチュラルにやってく天才なの。

  写真がある中で、したいことする。

  どれも貼りたかったんやろな(笑)。

  逆にウォーホルが真似したんちゃうんか? っていうような感じで(笑)。

  お母さんが上〜手に作ってるの。

  のアルバムは、私の勤めてる病院の上司の方から、お祝いできちっとした箱に入ったのをもらったん。幸宏、政志と二人とももらったな。

  こういうの贈ってもらったらアルバム作るよな。

  そうなんさ。贈ってもらったら作るさ。

  いいよね。絶対入れるよね。

  これはもう一生ずっと見ていくものだからね。言葉書くところとかもあったりして。今はもうないやろな、こういう風に一人ずつのアルバムとか。

  あるかもしれんけど、こういう風にアルバムを贈る習慣みたいのはなくなってるかもな。

  家族アルバムってさ、そもそも何で作っとんのかな?

  それはやっぱり、その時の状況を留めておきたいって思うからやろ?

  うんうん、その瞬間をな。

  それをまた一年、二年、十年とか時期を置いてから開いた時に、共有できるものでしょ。「あの時あんな事があったね」とか「あそこであんなんしたやん」とか言える、そういうものやろ? アルバムって。もうそれしかないんちゃう?

  だから未来にまた見ることを前提として作っとるわけやろ?

  そうそうそう。

  逆に一人では見やんか?

  一人で見る時は何かの節目だったりするんじゃない?

  集まった時にさ、出てくるケースの方が多いんじゃない? しかも一人で見るより何人かで見た方が絶対面白いやろ?

  そらそうでしょ。話題があって。

  そういえば、親父は今でも出かける時は、36枚撮りフィルムを一日一本撮るルールがあるよな。

  ちゃんとフィルムで撮っててね。現像も自分の好みで出来るし、フィルムの方がその時間が出る感じで、わたしは何か好きでね。ず〜っとこのカメラ使っとるな、自分の思う通りに撮ってくれる。

  うわ、めちゃくちゃファインダー覗きにくいっ!

  最近はデジタルになって、こんな風にファインダー覗くっていうのもないよな。

  ハーレーダビッドソンのキーホルダーつけてる(笑)。

  一万円のカメラ(笑)。なんぼ豪華なものでも、自分の心が撮れなかったら、いい写真が撮れませんね。

  で、近所の行きつけのカメラ屋さんに現像しに行くの。マーシーも高校の時からよく行っとったよな。

  それをね、色んな人に焼き増しして、しおりを入れて贈るの。

  このしおり、お母さんの手作り。みんなお母さんの趣味でね。

  押し花で、ラミネートしてるやん。

  これ、林檎の花やって。かわいいよな。

  そこら辺の道端に咲いとる花(笑)。

  カメラってものがある以上はやっぱり、時代がこういう風になってもさ、フィルムでずっと残していきたいね。今こうやって30年前のアルバム持ってきたやろ?明日でも時間があったら「また見たいな.!」と思うもんね。しまっとったけど、何かのきっかけでたまたま出てきたらね。やっぱり昔の8ミリの映像で見る以上に、こうやってアルバム見るのもいいな。

  あ、これ、日付機能(笑)。

  日付のところをコロンコロンとひっくり返して回してね。撮った日付にして、写真の中に入れて撮るん。

  懐かしいなあ〜。30年前……。

  しっかり見てみると意外と面白いヒントがいっぱいある。

  こっからネタ探します。

  木村伊兵衛賞作家の唯一のネタ元って言われるかも(笑)。



『浅田家』

「家族の力」

家族5人でお話された後、改めて浅田政志さんに作品『浅田家』と新作『みんな家族』についてお聞きしました。

『浅田家』は、自分の中ではアルバムだと思ってて。自分にとってかけがえのないもの。家族で何かするっていうことは、本当にいろんな可能性があるんだってわかったし、はっきり言ってあの作品は、一人じゃ絶対無理だから。家族みんなの力があってできてる。これは口で言うのはすごく難しいんだけど、『浅田家』を撮っていていつも不思議なのは、一つのシチュエーションに対して、明らかに光ってる写真が必ず一枚ある。だからセレクトの時に悩まない。そりゃま、言葉に出せば、その写真はバランスが取れてて、みんな表情が良くて、揃ってて……って言うのは簡単なんだけど、それだけじゃない。この一枚は予想を超えてるっていうような一枚が必ずある。すごく不思議なんだけど。家族っていう関係の中で、力みたいなものが発生すると思ってて。それが、自分が生きてく上で力になるわけ。そこが一番力になるくらい俺は力になってる。俺はその力が本当に凄いと思うから、ずっと『浅田家』を撮り続けてる。でも、自分はそうなんだけど、本当にその力は確かなものなのか? って強く気になったんだよね。それで他の家族を見たくなった。だから『浅田家』の写真集が出る時に、「あなたの家族写真どこでも撮りに行きます」って自分の携帯番号を載せた。それをきっかけにはじまったのが、他の家族を撮る『みんな家族』シリーズ。 『浅田家』と『みんな家族』の違いは、まずシチュエーションの作り方が違うよね。『浅田家』だと消防署で撮ったり、ただ自分らがやりたいことだったりするんだけど、『みんな家族』の時は、その家族から出てくるシチュエーションになる。やってることは一緒なんだけど、内容が違う。撮る意識も違って、『浅田家』の場合は、自分がいろんな力を家族からもらうような感じ。逆に、人の家族のところに行く『みんな家族』は自分が開いてかなきゃいけないから、自分で発する感じ。でもそれは結局、また力としてちゃんと返ってくるんだけどね。


『みんな家族』

『みんな家族』のセレクトで、たまに悩むことがあるとすれば、人数が多い時なんか「ああ.、何で全部ピタッとこなかったの?」っていうのがまだ正直あって。基本一つ決まればそれはもう動かないんだけど、それが一枚だけっていう時もあるし、ない時もある。200枚くらい撮ってるのに、そういう時は、むちゃショックやけどね(笑)。でもそれが、『浅田家』ではなかったんだよな。あの一枚がベストな一枚。そうやって「合う」っていうのが、家族だなって思う。家族と一緒に作るってことはその中で、興味とか集中の仕方、考え方がわかってくる。それが家族写真になれば、自分との関係性が見えてきたり、その時の思いが甦ったり。だから撮るっていうことは、いつもと違うところで新しい発見があったり、家族をよりよくわかっていくことに結びつく。『みんな家族』は、その家族との関わり方、撮るスピードやタイミングとか日々やりながら模索中なんだけど、その家族にとってきっかけになるし、変えていける力もあるかもしれないし、その一枚が家族にとって大切な一枚になるかもって思うと、撮ってて本当に嬉くて。やりがいはそれだけで充分ある。 とはいえ実を言うと、自分の作品って本当にこれが表現だとも思ってないんだよね。表現者としてあるまじき言動かもしれないけど(笑)。一緒に作りながら記念写真を残したいだけで。それを喜びに満ちて伝えたくなる。こういうものって、なくても生きれるけど、あると、こう……人生が違うぞと(笑)。

浅田政志(あさだまさし)

1979 年三重県津市生まれ。
日本写真映像専門学校研究科卒業。
スタジオ勤務後、写真家として独立。
写真集『浅田家』(赤々舎)で第34 回木村伊兵衛写真賞受賞。現在、東京を中心に各地で活動を展開している。


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