明日を撮る写真家

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Interview 明日を撮る写真家

写真は言語。自分は写真家である前に翻訳家だと思っています

濡れて乾く。そのことに人は美しさを見るんだと思う

写真集『SMOKE LINE』は、印刷に至るまで心が砕かれている。ある作品は、古来の活版印刷の技法で、またある作品は100年前の印画法、プラチナ・パラジウムプリントで現像されている。そのこだわからは、デジタルカメラ全盛の今において忘れられがちな、写真とプリントの関係を、改めて考えさせられる。

津田:「活版や昔の印画法で現像するという発想は、自分の中では自然に生まれたものです。時計すらどこにもないような場所の風景、電気も水道も通っていないところで暮らす人たちを撮るのに、僕だけが手軽な今の技術を持ち込むのは何か違うと思ったんです。彼らがごく当たり前に引き受けているある種のハンディを、僕のほうも同じだけ背負いたかった」

「何百年何千年とそこにあるランドスケープを、今の技術だけで表現したくなかったんです。すべてのことを、100年、200年の幅で考えようと。今回の一連の写真には、そうしたものがしっくりくると思いました。だから、一部の作品において印画紙を使わないということは、早くから決めていました」

手間や労力がかかることはもちろん、些細な環境の違いで仕上がりも簡単に変化してしまう。敢えてそんな手法を選んだには、そんなデリケートなプロセスを経てしか結ばない像があるという確信があったから。撮ったものをどう見せるかというところまで含め、すべてが作品を構成する一部だと津田さんは語る。

津田:「資生堂ギャラリーは、吹き抜けで光の加減なども難しく、壁面を一部グレーに塗らせていただいたりと、いろいろと工夫をこらしました。写真集も、A3サイズというのはおそらく一般の写真集としては最大といってもいい判型だと思いますが、担当の編集者も思い切ってくれました」

また、フィルムで撮るということにも、まだまだこだわっていきたいという津田さん。デジタルを否定するわけではないが、どうしても譲れない一点が、フィルムにはあり、デジタルには無いのだという。それが、「水」。

津田:「写真がなぜ美しいのかと考えたときに、僕の中のひとつの答えとして『水の中で像を結ぶから』というのがあるんです。たとえば、ただ和紙に墨汁で字を書くというだけなのに、書を美しいと感じるのは、“濡れたものが乾くから”なんじゃないかと。日々の暮らしや映画のワンシーンでも、雨や雨上がりにはグッと心惹かれるものがありますよね。もっといえば『泣く』と『笑う』ということも同じ。『濡れる』と『乾く』の相関に、人がどうしても心惹かれてしまう何かが、あるんじゃないかとずっと考えていました」

「写真が美しいのも、現像液を通過するからじゃないかって思うんです。今はもうそれは、確信に近い。美しく物を残すには、水に一回濡らさなきゃいけないって」

現像液の中で漂いながらゆっくりと像を結び、再び目の前に蘇る、地の果ての風景。津田さんのいう「世界を翻訳する」という作業は、カメラのフレームに入れて持ち帰った“世界”のかけらを、私たちの目の前に再現して見せてくれることなのだ。


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