明日を撮る写真家

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Interview 明日を撮る写真家

米田知子

よねだ・ともこ/写真家 1965年兵庫県明石市生まれ。89年イリノイ大学シカゴ校芸術学部写真学科卒業。91年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)修士課程修了。現在ロンドンを拠点とし、意欲的に作品を発表。個展「記憶と不確実さの彼方」(東京/2003)、「A Decade After 震災から10年」(芦屋/2005)、グループ展「第52回ヴェネチア・ビエンナーレ」(ヴェネチア/2007)、「美麗新世界:当代日本視覚文化」(北京/2007)など、国内外で高い評価を受けている。


見て終わりではなく、そこから想像して欲しい

本当に大切なものは目には見えない。それは『星の王子様』に出てくる有名なフレーズだが、そんな「目には見えないもの」をテーマに撮り続けているのが、写真家・米田知子さん。たとえば『シーン』と名付けられた、一見何の変哲もない、のどかな風景を映したシリーズ。しかし、ごくありふれた穏やかな街の写真が、実はそう遠くない過去には戦火のまっただ中であった場所であり、そこで命を落とした多くの人々がいたと知らされたとき、わき上がってくる感情、さまざまな想い。その写真を見ただけではわからない理由が、ひっそりと横に添えられたタイトルやキャプションによって静かに開示された瞬間、私たちはもうそこに最初と同じものを見ることはできなくなる。それこそが、米田さんの表現したい「目に見えないもの」の正体。

米田:「写真だけで、すべてを完結させて表現することはあまり考えないですね。戦場跡であれば大抵モニュメントがあるので、それを入れればその場所がどんな場所であるかはわかるかもしれないですが、見る人は、それで終わってしまうんじゃないかと思うんです」

「もっと見る人に想像してほしい。私の撮った写真を見て、何を思うかは、人それぞれでいいと思います。ごく個人的なことでかまわないんです。ただ、そのとき浮かび上がってきたものを、またその写真の風景の中に反映して欲しいんですね」

子供の頃から、自分でお話をつくったり、“想像する”ことが好きだったという米田さん。生まれ育った兵庫県明石市は、歴史とは縁の深い土地柄、米田さんの身近にはそうした史跡が至るところにあった。過去に想いを馳せ、そこに物語を見、想像を広げていくということは米田さんにはごく自然なことだったという。

米田:「歴史に惹かれるんです。その裏にある物語、当時の人々の想いに、触れたいんです。たとえば廃屋にある暖炉の火の跡を見ると、そこにかつて住んでいた人たちの姿や、交わされただろう会話を想像したくなるんです」

「はじめのうちは、その場所に自分で持ってきた小物を置いて撮影をしていました。ノンフィクションを記憶する場所に、私の持ち込んだフィクションを加えることで、私がそこに見る“物語性”を表現しようとしていたんだと思います。でも、そのうち、その場所を撮るだけで十分なんじゃないかと思うようになりました」

代表作『見えるものと見えないもののあいだ』、通称「眼鏡」シリーズは、トロツキー、ガンジーといった過去の偉人たちが実際かけていた眼鏡のレンズを通し、彼らにちなんだ文書や手紙を撮影したもの。ほぼ同じアングルで淡々と撮られた写真から、静かに、しかし確かに「歴史の持つ物語」が立ち上る。作品のひとつ、フロイトの眼鏡を透過して見えるのはユングのテキストだ。かつての愛弟子であり、その後意見の相違から別れていったユング。彼のテキストを読むフロイトの心中は穏やかだったろうか、あるいは逆だろうか?

米田:「私自身、そういうことを想像していると飽きないんです。眼鏡を撮影する時、同席している博物館の方はたいてい3時間くらいで飽きて監視をやめてしまうので、その後は一人集中して撮影を続けています」


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